遠いうねり―グイン・サーガ〈127〉 (ハヤカワ文庫JA)

9 月 30th, 2009 by admin

遠いうねり―グイン・サーガ〈127〉 (ハヤカワ文庫JA)

栗本 薫

遠いうねり―グイン・サーガ〈127〉 (ハヤカワ文庫JA)

定価: ¥ 609

販売価格: ¥ 609

人気ランキング: 2013位

おすすめ度:
発売日: 2009-06-10

発売元: 早川書房

発送可能時期: 在庫あり。

グインはこれでよかったのかも
 作者逝去後に出た初の巻です。グイン・サーガが完結しないことを知って読む初めての巻です。ヨナやスカールがミロク教の聖地ヤガに入ります。いよいよミロク教の謎が明らかになろうとしています。そして、ふたたび風呂敷を拡げています。

 グインに完結してほしかったです。しかし、グイン・サーガとは絶え間なく語られる「サーガ」であり、結論ではなくそのときそのときの流れを味わえばそれでいい物語なのかもしれません。本当は、作者もグインが完結する日なんて想像できてなかったんじゃないのかな、とすら思います。

ヨナも知らないミロクの世界
『遠いうねり―グイン・サーガ〈127〉』です。作者没後に刊行された最初の巻です。

作者死去という感傷を抜きに評価しても、この巻は最近の中では良かったと思います。



ヨナが旅をして観光案内の巻があったり、ヴァレリウスが延々と懊悩する巻があったりして退屈に感じた、という反省があったのかどうか、この巻は前半がパロ編。後半がヨナ編です。両編ともに、変化、進展があります。



パロ編では、サイロンの情報が色々ともたらされます。そこで、外伝第一巻の『七人の魔道師』に追いついたことが明示されます。

イシュトヴァーンが新たな動きを起こそう、というヒキで終わるのはいつものパターンですが、今回は半分の分量でヒキにたどりついているので、スピード感は最近の二倍です。

後半ヨナ編は、物語の焦点となりつつあるヤガです。

ヤガ観光案内要素ももちろんそれなりにあるのですが、読者にとっては初めて聞かされる情報が次々と出てきて、ヨナとスカール異色コンビの旅は明らかに冒険行の色合いを濃くします。

残り数冊、読者としても最後まで楽しみたいところです。



本当に遠いところに旅立ってしまいました
この「遠いうねり」は、前半はパロでイシュトヴァーンとヴァレリウスの会話が殆んどです。

そして後半は、いよいよヤガに到着したヨナとスカールの話でした。

全体に、まあまあ話の進みは順調にいっているといったところですかね。



それ程これまでの数巻にあったように、内容が停滞しているといったほどではなかったかな。

しかし毎回同じ人物なのに、性格や人格がコロコロ変わってきている感じがするなあ。

イシュトヴァーンのことを、ヴァレリウスは思っていたほど馬鹿ではなかったのかといささか見直してきているようです。

しかしそれにしたって、これまでイシュトヴァーンの行動が支離滅裂だったのは事実だしねえ。

作者いきなりイシュトヴァーンを賢くしないで欲しいなあ。

それじゃあこれまでの彼の出鱈目ぶりって一体なんだったんだい。

そんなに話の中では何年も経っているわけではないんだから、若いときの過ちだったというにはいささか最近のことすぎる気がするよ。

まあ、いつまでも彼がお馬鹿な王様では、展開に差し障りがあるからなんでしょうが、イシュトヴァーンってそんなに策略をめぐらせたりできる人だったっけ。

なんとなく私のイメージしていた人格とかけ離れていっている気がする。

決して人格が成長していっている風な書かれ方には思えないんだけれども。





印象としては、後半の方が面白かったかな。

ヤガなんてお堅い宗教都市にはあんまり興味は無かったんだが、どうやらいろいろ刺激的なことが起きそうな気配ではないですか。

ヨナ君もすっかりアクティブな人物に変化してきているみたいだし。

こちらの方は割りと気に入っています。

それに彼がいつまでも思索的な人物のままだったら、確かに話が進まなくなっちゃうしね。

この場合はよい変化に思えますね。

スカールの方が主役ではなくて、ヨナ君が話を引っ張っていっているような感じです。

登場人物たちが払底しているうちに、いつの間にかヨナ君が活躍するようになってきましたか。

確かにちょうどいい年齢の若者のキャラクターが、全く死に絶えてしまった状態ですもんね。



もっと早い段階で、強烈な個性と魅力を持った、新しい副主人公候補を登場させておくべきだったんでしょうね。



今からチビイシュトヴァーンやドリアン君たちの成長を待つんではいささか気が長すぎますし。

栗本薫さんは、最後まできちんとストーリィを練ってから書く人ではなかったしなあ。

行き当たりばったりで、あれこれ破綻の多い作品の方が、その場その場では迫力があって面白い小説だということも結構あることだしねえ。

最初から最後まできちっと構成された、起承転結がはっきりしている端正な作品が、無味乾燥な教科書的な駄作ということも、ままあることですし。

こういうむちゃくちゃな作風が栗本さんの持ち味だったんだし、それを長年楽しんできたんだからな。



こうやって感想を書けるのも後2冊ほどですし。







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YOSHIKI/佳樹

9 月 30th, 2009 by admin

YOSHIKI/佳樹

小松 成美

YOSHIKI/佳樹

定価: ¥ 2,310

販売価格: ¥ 2,310

人気ランキング: 1688位

おすすめ度:
発売日: 2009-05-25

発売元: 角川グループパブリッシング

発送可能時期: 在庫あり。

その劇的な半生は興味深いが、一部信憑性に疑問も
YOSHIKIが直接関わった初の伝記。その文体は伝記と呼ぶには過度に感傷的な気がしますが、本当に幼少期の頃から波瀾万丈で、何度読み返しても飽きません。

経済的に何不自由なく、両親や周囲の人々の愛情に恵まれながらも、病苦に苛まれ続けた幼年時代。音楽的才能を開花すると共に、ようやく健康を手に入れ、明るい未来が見え始めた矢先に父親の自殺に直面した小学時代。髪型などに対する教師からの抑圧に反発し非行に走る一方、音楽への関心を更に高め、また勤勉かつ学業優秀で、暴走族の集会でも勉強をしていた中学時代。喧嘩に明け暮れる一方でロックに一層夢中になり、猛勉強の末に掴んだ音大への進路を捨ててロックバンドで生きる事を選んだ高校時代。バンドの活動方法など何も知らない状態から経験を積み重ね、遂には自らレーベルを立ち上げて経営者となり、また猛特訓と試行錯誤の末にインディーズで記録的な売り上げを達成したアマチュア時代・・・

メジャーデビュー以前から、その人生は漫画のように非常に劇的で、実に伝記としての読み応えを感じさせます(デビュー以降の記述は、YOSHIKIを美化しすぎている気がします)。以前に出版された、X-JAPANに関する暴露本の内容が、実は概ね正しかったというのは複雑な心境ですが。ついでに言えば、有名なカレー事件・シャワー事件などの真相も記されています。



ただ、HIDEの急死以前の記述はX-JAPANの誕生とメンバーの人間模様として、概ね一つの物語として仕上がっているのですが、その後YOSHIKIが立ち直るまでの様々な出来事の記述について、どれも断片的で統一性が欠けているという印象です。

また、事実関係についても一部疑わしい箇所があります。TAIJIに解雇宣告した日時やその時のやり取りの内容がTAIJI本人の自伝と一致せず、また彼を一方的に悪し様に書いておきながら、解雇を決意した理由については明らかにしない点は、信頼性に乏しいと言わざるを得ません。

またX-JAPANの解散記者会見について、事前にTOSHIの個人事務所に会見を開く事を伝えたのですが、TOSHIはその直後の取材に「全く知らされていなかった」と答えました(脱退したTOSHIは会見を決定する打合せに加えられなかったという趣旨だと思いますが)。その態度に激怒し、ラストライブの最中もその怒りを抑えるのに必死だったとYOSHIKIは複数の取材に答えているのですが、この伝記にはその事には全く触れていません。

更にTOSHIがX-JAPAN脱退を決意した経緯については、その心情の変化も含めて詳細に記されているのですが、彼が復帰を決意した経緯の記述はほとんどないのが気に掛かりました。

カットしすぎ
読んで思ったのは、YOSHIKIの幼少やデビュー前の話などがページの半分近く書かれていること。誰もがちゃんと知りたかった再結成についての裏話的な話や、2000年あたりから急に数行で誤魔化されているあたりが納得いかない。X解散について細かく書くのなら、幼少時代に体が弱くてとかなんて話はどうでもいいから、あのTOSHIともう一度Xをやると決めた理由を詳しく書いてほしかった。正直、再結成を決めた本当の理由が一番知りたかった。また、TAIJI脱退の事もHIDEのせいに書かれていて納得いかなかった。ちなみに読み返すとき、幼少からデビューまでの箇所は殆ど読み飛ばしています。『林佳樹』なんてどうでもいいから。

途中で止めた
嘘がある気がする
ファンを感動させようとしてるのがなんとなく感じられて嫌だった

インタビューとかで話してたことと違う(昔の出来事が) 部分がある

まぁXは出せばなんでも売れるからこうなったのかな
ちょっとがっかり
保管しとく、飾っておくというのにはいいのかも

批判したけどファンではある…


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身体も心もボクのもの ~はじめてのSMガイド~

9 月 30th, 2009 by admin

身体も心もボクのもの ~はじめてのSMガイド~

三葉

身体も心もボクのもの ~はじめてのSMガイド~

定価: ¥ 1,365

販売価格: ¥ 1,365

人気ランキング: 297位

おすすめ度:
発売日: 2009-05-18

発売元: 一迅社

発送可能時期: 在庫あり。

ビギナーズ・マニュアル
SMプレイに興味はあるけど怖くて始めることができなかった人のためのビギナーズ・マニュアルです。アドバイスも"こうするとどうなる、これ以上は無理"など具体的でわかりやすいです。それほどSMプレイに興味がなかった人でも、漫画だけじゃなく説明文を読むのも真剣になってSMの心理を理解することができる本だと思います。

この手の本にしては買いやすい
サブタイトルにもある通り、SMをこれから始めようとする人向けに作られた本です。



最近では目隠し、手錠プレイくらいならソフトSMとして一般にも認知されてきてますが、本書ではその少し先までを紹介してあります。よって本書のターゲットは



「これからSMを始めたい人」

「ソフトSMよりも先に興味がある人」



であると言ってよいかと思います。



本書はSM本にしては買いやすいのも一つの特徴です。

アダルトショップに置いてあるようなSM本は、多くが昭和っぽい緊縛写真の表紙だったり刺激的すぎでした。

「緊縛入門」とか言われても表紙が入門しずらいオーラを放っていて買いにくいんですよね。

それらと比べたら遥かに買いやすい。私みたいなチキンでもなんとかレジに持って行けたのですから。





内容については、大ざっぱに書くと以下のようなものです。

・SMをはじめるにあたって

・Mの心理

・各種プレイの概要

・各種緊縛の手順



それぞれをマンガ、挿絵、説明文を適度にブレンドして読みやすい教本に仕立て上げてあります。

冒頭でも言ったとおり、マニアックすぎるところまではあまり踏み込んでいませんが、拘束、スパンキング、アナルプレイ、各種おもちゃの用法と一通りは網羅されてる印象。

緊縛の手順が漫画ゆえか縄運びが若干判りずらかったのですが、なんとか解釈はできるレベルでした。



全体的に読みやすく、判り易く、買いやすい、入門書としては良い内容だと思いました。


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アイシテル~海容 前編 (1) (KCデラックス)

9 月 30th, 2009 by admin

アイシテル~海容 前編 (1) (KCデラックス)

伊藤 実

アイシテル~海容 前編 (1) (KCデラックス)

定価: ¥ 600

販売価格: ¥ 600

人気ランキング:

おすすめ度:
発売日: 2007-03-06

発売元: 講談社

発送可能時期: 通常5~10日以内に発送

こんなことがあったらどうしよう
テレビを見て読んで見たいと思いました

内容が子供が子供を殺したのか?うちにも三人の子供がいます

今はみんな社会人になっていますがもしこんなことがあったら自分はどうしただろうと

考えさせられました

涙が止まらなかった
読んで、心を動かされるのを止められなかった。

被害者の家族、加害者の家族、当事者二人の子供の描き方が見事で一人一人、個性を持ち、その立場故の感情があり、

完璧ではなく、間違いを犯している。

こんなに力を持った漫画に久しぶりに出会った。

絵柄は少し古い印象があるけど、ストーリーの見事さで気にならない。読み進めてゆくうちに絵柄にも心が動く。



とにかく見事な作品です。

読んでほしい。

漫画を読んで作った漫画ではない。

この漫画に正義の味方はいない。

脇役の一人に至るまで普通の人たちばかり。

押し付けがましい正義感はなく、奇をてらったシーンもない。

なのにこの作品の力は何だろう。



作者の力量にただ脱帽する。

ただショッキングなだけでなくそれぞれが何かを抱えながら生きてゆこうと思わせるラストに涙が止まらなかった。

講談社の漫画は似たようなものが量産されている印象があるけど、この作品のように思いがけない良作もたまに

出てくるので油断ができない。



何度も読み返したい。

加害者の子供も、実は被害者
テレビの同名のドラマを見てから本書を知ったが、一瞬の表情や情景を巧みに描き、テレビにない漫画ならではの説得力があった。



神戸の事件がモデルとなったと思われるが、少年Aの母親の「この子を産んで」や、Aの内面をえぐった「酒鬼薔薇聖斗の告白」などと異なり、被害者の視点を交えて、両者の接点を探っていることが斬新で、深みを与えている。



子供である加害者も実は愛に飢えた被害者なのだという、人間の根源から訴える弱さや悲しさが感動を呼ぶ。


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寺よ、変われ (岩波新書)

9 月 30th, 2009 by admin

寺よ、変われ (岩波新書)

高橋 卓志

寺よ、変われ (岩波新書)

定価: ¥ 819

販売価格: ¥ 819

人気ランキング: 218位

おすすめ度:
発売日: 2009-05

発売元: 岩波書店

発送可能時期: 通常5~10日以内に発送

著者の行動力と志の高さに、感銘を覚えるとともに、このような人物が現代の我が国にもいるということに安心感を感じた。
 本書は、あるお寺に生まれた著者が、不本意ながらもその寺の跡取りとなり、ある島での戦没者の遺骨収集の体験をきっかけとして、現代社会におけるお寺のあり方を問い直し、自ら様々な改革をしていく物語である。



 著者の問題意識にあるとおり、われわれにとってお坊さんとはどこか胡散臭い印象が拭えない。宗教法人であることをいいことに、金儲けに走っているところも少なくはないのではと言う印象が蔓延している。古くからの檀家制度も今や崩壊の危機にあるようにも思う。



 このような中にあって、今一度仏教の原点に立ち返り、様々な活動を通して寺の再生に尽くしてきた著者には、敬意を表したい。

 本書に出てくる取り組みは様々である。命とは何かについての対談。決算の透明化。NPO法人の立ち上げ。廃業となった旅館を活用した介護事業。葬儀社を通さない故人に合った葬儀。などなど。



 こういう活動が全国に広がりを見せれば、我々のお寺に対する意識も変わり、より身近なものとなっていく気がする。



 著者の行動力と志の高さに、感銘を覚えるとともに、このような人物が現代の我が国にもいるということに安心感を感じた。

大きすぎるお寺
 著者のお寺の檀家さんは七百軒。それを一人でお参りするなんて無謀ではないだろうか。「四苦に真正面から向き合って」という姿勢には共感するが、それが日頃のお参りの中でどれだけできているか疑問だ。気持ちはあっても物理的に無理だろう。棚経の五分の時間で、檀家さんの実情を把握し、問題点を見つけ出すなんて、少しでもお参りの経験のある人ならば、できない話だとすぐ分かるのではないだろうか。お寺の価値はは、住職と檀家さんがお参りを通じてどれだけ対話ができるかにかかっていると思う。役僧(お参りをするために雇っている僧)さんを使わなければ維持できないほど大きくなったお寺も問題だが、それを一人で抱え込むのも問題ではないだろうか。

 社会の様々な問題に目を向けて取り組んでいくことは、僧侶のあるべき姿として学んでいこうと思う。しかし、お寺の維持経営に関する部分には疑問が多い。寄附を否定的にとらえ、銀行からの借り入れをすすめているが、時と場合によるだろう。借り入れができるお寺は限られているのだ。

 気になるのは、檀家外の葬儀が四割近くもあることだ。葬儀さえ何とかなれば、あとは知らない。お寺がどうなろうと関係ない。できるだけ安く上がればそれでよい。このように考え始めた人たちの受け皿になっているのではないだろうか。アフターも心配だ。寄附が無いお寺という宣伝効果は大きいが、逆に寄附を頼りにしているお寺にとっては、そのような宣伝によって厳しさが増すことになる。

 回りきれない多くの檀家さんをまとめていくイージーな方法はイベントを行うことである。責任を持たされることもなく、その他大勢となってイベントに参加することで、宗教的雰囲気も味わえる。テレビの霊能番組を視聴するのと変わりない意識で宗教的儀式を済ませることができるのである。しかし、これでは檀家さんがおかしな方向に向いて行く危険性は大きい。著者のお寺はイベントに頼りすぎている感じがする。

 著者の言うように葬儀を変えることも大事だが、日常のお参りを真面目に行い、日常のお参りをより意味のあるものに変えていくことの方が、より大事だと考える。

 お参りを他人に任せたくないという著者の気持ちは理解できる。その気持ちを実のあるものにするのには、大きくなりすぎたお寺を分割するという方向で寺を変えるということしかないと考える。

めざめた坊主がお寺を変える
旧態依然とした仏教界を批判し、海外の仏教(者)の素晴らしさなどを紹介しつつ現代日本の仏教とお寺の改革を説く言論は、最近よく見られるようになり、ややマンネリ化しているような印象すらあり、本書のタイトルを見たときは正直「またかい」と思った。だが、一読してみてこれは「違う」な、という感想を抱いた。この種の本は、これまで僧侶ではない宗教評論家(研究者)みたいな人による理想論という性質がいかんせん強かったのだが、本書は違う。

寺に生まれ寺に育ち、寺に反発し寺に嫌気がさしつつ、だがこの世界に満ち溢れた「苦」の存在を痛感したことをきっかけとして、真の仏教のあり方を模索し始め寺での活動に全身全霊をかけるに至った人物の、実際的な成果報告とさらなる改善への提言書、なのである。日頃の法事をはじめとするベーシックな寺活動と、パフォーマンス性あふれるイベントの開催や地域福祉の取り組みを見事に両立させている(させようと必死でがんばっている)人の発言だけに、その説得力は段違いである。

とはいえ、率直に言って疑問に感じてしまう部分も多々ある。著者のようにタレントや知識人から弁護士や医療従事者まで非常に幅広い人脈を築くことに成功した人の話に一般性はあるのか、地方の兼業寺院と都会の寺町におかれた個別寺院とに共通して当てはまるアイデアなどどれだけあるのか、寺を、NPOという近代的な経済合理主義を背景として誕生した世俗的な制度と類比的に論じるのはそもそも適切なのか、などなど、「?」が思考にのぼり著者の文章がストンと入ってこないところは最初から最後まで沢山あった。

だが、本書が、日本のお寺/仏教が進むべき一つのありえるかたちを明確に示していることだけは確かである。関係者が、この魅力的なもの言いに一度はふれてみることは、決して無駄ではないだろうと思う。


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