自民公設秘書500人失職の危機
Posted by gorira
衆院選で大敗した自民党前議員の秘書や党職員の間で、失業への不安が広がっている。
同党は公示前の300から181も議席を減らし、500人以上の公設秘書が失職する計算。国から政党活動費として配分される政党交付金も、同党は大幅に減るとみられ、党本部には「リストラは避けられない」と悲壮感すら漂っている。一方、公示前の115議席から308議席と2・7倍になった民主党は、深刻なスタッフ不足に陥る可能性が出ている。
◆「身の振り方がわからない」◆
「家族の生活もあるし、新しい民主党議員の秘書になれればいいが」
東京都内から出馬して落選した自民党前議員の女性秘書は、地元の事務所でため息をついた。2003年から政策秘書として議員会館の事務所の経理や、政治活動の全般を統括してきた。今回の衆院選では猛烈な逆風を感じていたが、最後は勝ち残れると予想していただけに、再就職先の確保もしていない。
これまでなら議員が落選しても、自民党の公設や私設秘書らで作る秘書会が再就職をあっせんしてくれたため、新たに当選した同党の新人議員に雇ってもらうことも難しくはなかった。しかし今回、議席を獲得した同党の新人議員は、たった5人。民主党の議員秘書になりたくても、同党からは「他党の秘書を雇うのは機密上好ましくない」(民主党議員政策秘書)という声が上がっており、再就職が難航するのは必至だ。
自民党秘書会の三盃(さんばい)幸久会長は「今回当選できたのは前議員がほとんどで、新たに秘書を受け入れる余地はない。今回ばかりは秘書会のあっせんは機能しないかも」と疲れ切った表情。自分が仕えるベテラン前議員も落選し、「私も身の振り方がわからない」と言葉少なだった。
◆「野党になったら職員は半分」◆
自民党は、政党助成法に基づき、議席数や獲得票数などに応じて国から受け取る政党交付金も激減する。
年4回に分けて支払われる2009年分の交付金は今年1月時点の算定で、自民党が157億3300万円で、民主党が118億3200万円。それが10月分からは大幅に減り、来年以降は、民主党とほぼ逆転するとみられる。このため180人ほどの自民党本部のスタッフについても、ある自民党幹部は「そりゃ(リストラを)やるだろう。職員は半分ぐらいだな。野党になると本当に仕事がないから」と自嘲(じちょう)気味に語った。
さらに多くの前議員は党の支部長を兼ね、党本部から政党交付金を受けていることから、計5人のスタッフを抱える都内のベテラン前議員の秘書は「党からの交付が大幅に減るのは確実で、事務所の人員を縮小せざるをえない」と語る。
「支援者から『次も頑張れ』と励ましの声をたくさんもらったが、不景気で政治献金もなかなか集まらない。台所事情を後援会に率直に相談するしかない」
国会と地元に6人のスタッフがいる前議員の政策秘書もそう嘆いた。
◆民主は人材不足深刻◆
143人もの新人議員が誕生した民主党では、深刻な秘書の「人材不足」が予測されている。
政策秘書を含め3人の公設秘書は、国から給与が出るが、政策秘書は、合格率が高い時で9%台という厳しい資格試験を通るか、10年以上公設第1秘書か第2秘書を経験することなどが必要。国会運営の流れや、国の予算や行政機構に通じた人材を育成するにしても何年もの時間がかかる。民主党のベテラン政策秘書は「公設第1秘書や第2秘書は簡単に見つかるだろうが、政策秘書は圧倒的に足りなくなる」と心配していた。
日本においては、長らく政策立案は国家Ⅰ種、いわゆる「国Ⅰ」官僚によって担われてきた。というのも、立法者たる議員に政策立案能力はなく、いわば各々の地域、選挙区、あるいは業界団体の「利益代弁人」に過ぎなかったからだ。
「立法」という作業は、現在異常なほど専門化している。日本の法令すべてから関連法令を探し、準用できる条文を洗い出す、文言に矛盾がないように整合する、あるいは、似たような言い回しを持ってくる……。まさしく、官僚的な立法作業である。そして、日本の法令のほとんどが内閣(つまるところ、内閣を通じた官僚による)提出であるから、内閣法制局が(文言については)全てを担ってきたといってもいい。当たり前だが、内閣法制局のスタッフは職業公務員であり、試験に通っただけのいわば一般人である。
中公新書「アメリカン・ロイヤーの誕生」(阿川直之)などにも書かれているが、アメリカでは「ロイヤー」、つまり弁護士らがこのような政策スタッフを担っている。そのため、ワシントン(地域)を中心としたロースクールでは、「立法過程」「連邦通信法」「米国通商法」といった、ワシントンならではの授業が展開されているという。(日本の法科大学院の講義科目を比較すると興味深い![]()
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これはアメリカにはキャリア官僚が存在せず、政府が変わる事に政府の、特に実務レベルの重要なポジションにロイヤーが就く環境が大きいのだろう。(通常の職業公務員はせいぜいが課長レベルで、それ以上は大統領が指名する「猟官制度」をとる。)そのため、ロイヤー自身も平時から政党スタッフとして党務(ビラ配りから政策検討まで)に励むという。つまり、大統領(あるいは政党)の息のかかった「政策立案能力のある人間」が、アメリカ、特にワシントンには平時から存在し、政権交代を待っている訳である。
さらに、アメリカでは議員立法“しか”認められていない。
法案を提出できるのが議員のみであるのだから、当然、議員はかなりの政策スタッフを抱える必要がある。日本でも、アメリカを見倣い、「政策担当秘書」という三人目の公設秘書制度が1994年にスタートした。しかし、政策担当秘書は「政策担当秘書試験」(国Ⅰと同レベル)合格者、あるいは元からいたベテラン秘書が研修を受ければ良い、という程度の条件で、専門性の高いスタッフが育っているとは言えない状況だ。そもそも、試験に合格しても「有資格者名簿」に記載されるのみで、あとは議員が決定するため、試験合格者をわざわざ雇っているのは全体の1割と言われている。(あとは、ほとんどが研修をうけた既存の秘書を「政策秘書」としている。なお、その「専門性」から政策秘書は他の公設秘書より給与が高い。当然これも税金である。)
しかし、日本の選挙に一度でも関われば、いざ「議員になる」「選挙に通る」ためには、地元選挙区との綿密な連携や地元支持者との常日頃からの繋がりが重要であり、純粋な政策スタッフより、行動力のある「ベテラン」の心強さがよく分かる。選挙のノウハウなども、つまるところ有力な支持者(≒後援会、業界団体)や地元の地方議員、その秘書らが手工業のように伝えていくものであり、「政策」は二の次、三の次となることも(現状では)致し方ない。