普段はIT業界の最新ニュースをお伝えしている当連載、今月は、あるブログエントリーが発端となって、はてな界隈やブログ界隈を盛り上がらせた、一連の騒動の経過をご紹介。そこから見えてきたのは、ネットがもたらす"日本的なるもの"の破壊だった──。
先ごろ株式公開したインターネット企業paperboy&co.の元役員で、人気ブログ「Kousyoublog」を書いている山野光正氏(37)が6月19日、「解雇されたので起業します」というエントリーをアップした。以下のような内容だ。
山野氏は今年4月にコンサルタント企業に転職したが、同月末、風邪をこじらせて2日休み、3日目の朝になって「午後から出社します」と上司に メールで伝えた。ところが上司からは「もう来なくていい」という驚くべき返事が返ってくる。「解雇ということですか?」と山野氏が聞き、「どちらでもいい が、あなたのキャリアに傷がつくので自己都合のほうがいいですよ」「いえ、退職するつもりは無いので解雇されるつもりなら解雇通知書と解雇理由書を送って ください。その上で対応検討します」というやり取りがあった。
そして送られてきた解雇理由書には、勤怠不良による懲戒解雇と書かれていた。山野氏は「病欠が解雇理由になるはずがない」と内容証明で懲戒解雇 の無効と解雇予告手当の請求を送付した。この結果、会社側は普通解雇に切り替えて、解雇予告手当30日分を支給し、4月末で解雇となった。
なぜ病欠で解雇となったのか? 同エントリーで山野氏はこう書いている。
「何が上司をそうさせたのだろうか、と少し考えていて、ある日、ああ、そうかもしれないという発見をした。上司はとあるところでブログを書いているのです が、僕と上記のメールのやり取りをした日の夜に書いていたブログの内容をざっくり意訳すると『欠勤しているのにブログを書くような奴は仕事中も手を抜くに 決まっているので、会社にとって"悪"だ。組織に伝染する前に"ひねり潰す"』的なことが書いてあった。確かに欠勤中に布団の中からブログ書いたりはして た。それが適切だったのか、適切じゃなかったのかわからない。僕はそれは問題ないことだと思うが、賛否両論あるだろう」
このエントリーは話題となり、「上司」のブログはすぐにネットの住人たちに見つけられた。「上司」だったのは、未来予想株式会社で代表取締役 COO(最高執行責任者)を務める庄子素史氏。彼がアメーバブログで4月28日に書いた問題のエントリーは、「権利ばかり主張して義務を果たさない無能 人」というタイトルだ。短い文章なので、ほぼ全文を引用しよう。
「海外で病欠で欠勤中の女性が、欠勤中にSNSをやっていることがバレて解雇となったそうです。どこにでもいるんですね、労働者の権利ばかり主張して全く 義務を果たさない奴って。株主から預かった資金、経営者がリスクを負って銀行から借りた資金、その中から労働の対価として賃金で支給する訳です。労働と は、平日の昼の時間を会社でただ過ごす事ではありません。会社の業績を向上させるために、決められた役割や業務を遂行することです。そのそれぞれの従業員 の労働が集約された結果、利益が出て株主に配当され、銀行への返済も出来ます。
こんな当たり前のことすら理解しているのかいないのか分かりませんが、欠勤中に自分の好きなことをしているような人は、恐らく通常時も労働を通 じて会社へ貢献していない人ではないかと推測します。労働者保護の権利を主張するのも結構なのですが、大人として社会人として最低限の義務は果たして欲し いものです。大企業であればひっそりと存在しても許されるかも知れませんが、ベンチャーには『悪』以外の何者でもありませんね、そういう輩は。ただただ、 組織に伝染らないうちにひねり潰すのみです」
ネット界隈から集中砲火でエントリー削除の愚行
このエントリーは、ネットで強い批判を浴び、はてなブックマークで、「権利ばかり主張して広報リスクを計算に入れない経営者。COOが労基法を 知らない事を吹聴することがどれだけ会社・株主に損失与えると思ってるんだろ」「社名出してこんな馬鹿話書くことで会社への損害は無いのかね。少なくとも 俺は他人に『あそこはやめとけ』って云うよ」「無知な庄子素史がひどい。非拘束時間に何をしようが労働者の自由。労働法では拘束時間が労働時間と定義され ているしそれが労働の一般通念」といったコメントを集めた。
有名ブロガーの小飼弾氏も批判した。「あなたは9時前に体調を崩して会社に欠勤する旨を伝えて了承を取った後、15時ごろに体調が回復したとす る。あなたは残りの2時間のために出勤する義務があるのだろうか? 残りの2時間は、いくら有意義に使おうが『闘病』以外の私用であればとがめられなけれ ばならないのだろうか?」
また、シニカルな偽ニュースで人気の「ボーガスニュース」はこう書いた。
「ネット系ブラック企業の未来予想株式会社(庄子素史社長)は17日、まったく新たなバズマーケティング手法を取り入れたプロモーションサービス『ヒネッ ター』の提供を開始した。メディアの多様化が進むなかで効果的なプロモーションを行うにはどうすればよいか、首をひねっている広報担当者は多いが、同サー ビスを利用すれば社員の首をひねりつぶすだけで最適なPRが可能になる。(中略)『ヒネッター』は、いわゆる『炎上』を活用したまったく新しい手法を導 入。『気に入らない社員を労働法無視で首切りする』などコンプライアンス的に非難必至の愚行にわざと走ってネットの注目を集め、自社サイトや新サービスな ど任意のランディングページに誘導することを可能にした」
ケータイ小説「あたし彼女」の変な文体をもじって庄子氏を揶揄した文章もネットに現れた。「アタシ COO 仕事? 他の会社の お手伝い てか コンサル みたいな(中略)アタシが それなりの ポストで 雇ってあげたら すぐに 病欠 みたいな マジ こいつ ムカつくし(中略)普通に 休んで ブログ とか やっぱ ムカつくし ひねり 潰したい みたいな」(タンブラー「hmcy」より)
実のところ、山野氏が解雇された本当の理由ははっきりしない。病欠中にブログを書いたからというのは、氏の推測にすぎない。別の理由だった可能性もある。
しかし、仮に別の理由があったとしても、庄子氏が書いた「ひねり潰す」というブログのエントリーは、あまりにも無神経に過ぎた。経営者が従業員 に対して「ひねり潰す」というような言葉を使い、しかもそれをインターネットというパブリックな場所で公開するということがどのような結果をもたらすのか は、予測ができたはずだ。おまけに最悪なのは、はてなブックマークやブログ界隈で非難されたとたん、庄子氏がこのエントリーを削除してしまったことだっ た。自らの非を認めるのであれば、ブログ上で弁明なり謝罪なりをすべきであって、無言で発言をなかったことにしてしまうというのは最悪の対応である。
インターネットはすべてが可視化される恐ろしい世界だ。だから実名で発言する人には、細心の注意が求められる。しかしいまだにこのようなバカげ た対応をしてしまう経営者が存在し、しかも曲がりなりにも経営コンサルタントを標榜しているというのは、あまりにも情けないとしか言いようがない。
山野氏は先のエントリーで、こう書いている。
「この心理は典型的な日本人性とでも言うような思考過程のように思った。ケガレを共同体から取り除く、ということなのか」
このような日本人的な思考過程から、我々はなかなか逃れられない。しかし何ひとつ秘密裏に進めることができないネットの世界は、そうした思考過程を暴露してしまうことで、そのパワーを撃退しつつあるようにも見える。
昔の長~い映画、五味川純平著書を映画化した「人間の条件」全9時間(?)の抜粋を学校で見せ、日本人はかくも根性が悪くなり得るのだと解らせる…と言う のがチンパン君の持論です。日中戦争からソ連の参戦までの期間、日本の軍隊の中のイジメを描き続けたっていう内容です。これを見ればイジメは減るでしょ う。
知的な生活をしようとすれば、この上司のような根性の悪い監視人の存在は大きな障害です。知的でない会社が繁栄するとは思えません。少しぐらいサボっても許されるようなゆとりがないとオチオチ仕事をして居られませんね。監視人のことが気になると本業が疎かになります。
書いていてエスカレートしちゃった上司もヘンテコな人ですね。カウンセラーに診て貰った方が良さそうです。
Posted: 8 月 25th, 2009 under 未分類.
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