11 月
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リテラ・ポプリ38号・特集「北大は『がん』に立ち向かう」
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『リテラ・ポプリ』38号の特集は、「北大は『がん』に立ち向かう」。
今や国民病となった「がん」に関する研究・治療の最前線を、CoSTEPの受講生・スタッフが取材し、特集記事に構成しています。
特集記事は以下の通りです。
それぞれの記事関連するブログ記事へのリンクがありますので、ぜひご覧下さい。
松野吉宏さん 「時には『術中迅速診断』も」 [PDFファイル] [ブログ記事]
田巻知宏さん 「コミュニケーションによってこまやかなケアを」 [PDFファイル] [ブログ記事]
蔵田伸雄さん 「がん医療の現場に倫理学を」 [PDFファイル] [ブログ記事]
白土博樹さん 「がんを精確に狙い撃つ放射線治療」 [PDFファイル] [ブログ記事]
秋田弘俊さん 「一人ひとりに合ったがん治療の時代へ」 [PDFファイル] [ブログ記事]
松田彰さん 「新しい治療薬をデザインする」 [PDFファイル] [ブログ記事]
加藤元嗣さん 「ピロリ菌除菌による胃がんの抑制」 [PDFファイル] [ブログ記事]
石川正純さん 「放射線治療のプロフェッショナルを育てる」 [PDFファイル] [ブログ記事]
高田賢藏さん 「ウイルスを創薬に利用する」 [PDFファイル] [ブログ記事]
玉木長良さん 「がんの『はたらき具合』を画像化する」 [PDFファイル] [ブログ記事]
小野塚美香さん 「患者さんのニーズに応える医療サービスを」 [PDFファイル] [ブログ記事]
近藤哲さん 「バランスのとれた外科手術を」 [PDFファイル] [ブログ記事]
小松嘉人さん 「より良いがん治療を目指して」 [PDFファイル] [ブログ記事]
また、リテラ・ポプリ38号全文のPDFファイルは、以下のリンクからご覧下さい。
http://www.hokudai.ac.jp/bureau/populi/edition38/index.html
11 月
17
松野吉宏さん 「時には『術中迅速診断』も」
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松野さんは、最初から病理医を目指していた訳ではないそうです。学生の頃は、田舎で赤ひげ先生のようにあまり裕福でない人たちをサポートしている姿、もしくは研究者として顕微鏡をのぞいている姿を将来の理想像として思い浮かべていたとのこと。また、学生時代は病理医とはあまり接する機会がなく、身近な存在ではありませんでした。しかし、大学時代に研修先の病院で病理部に行ったことをきっかけに、病理医を目指すようになりました。
病理医は、顕微鏡をのぞきながら脳腫瘍、前立腺・・・と次から次へと検体をさばいていきます。そこへ手術室から外科医が飛び込んできて「どうですか先生!」とその診断を待ちます。「すごい医者がここにいる!ということを目の当たりにした。診断を決めているのはここだったんだ!まさにここは病院の管制塔だ!」と思った松野教授は、一生の仕事としてやりがいがあると感じ、病理医の道を選んだそうです。
現在、病理医が不足しています。リテラポプリの記事を読んで、一人でも多くの方が病理医の仕事に興味を持ってくださることを願っています。そしてその中から病理医を目指す人が現れたらとても嬉しく思っています。
11 月
17
田巻知宏さん 「コミュニケーションによってこまやかなケアを」
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田巻さんはとても穏やかな方で、患者さんに対していつも真摯に向き合っている人柄をうかがい知ることができました。
ここで、緩和ケアの根源である苦痛のとらえ方について補足したいと思います。人間の苦痛には、次の要素があるそうです。
・身体的苦痛:身体の痛み、疼痛。
・精神的苦痛:不安感、苛立ち、恐怖感など。
・社会的苦痛:身分の保障がされない、家庭内でのポジションが変化するという思いからくる苦痛など。
・スピリチュアルペイン:人間の生命の根源にかかわるもの。「どうして自分だけが」「こんなに頑張っているのに・・・」という思いからくる苦痛など。
緩和ケアでは、相互作用しているこれらの苦痛を統合的にとらえ、患者さんをさまざまな面からサポートしています。このような痛みの概念を、トータルペインといいます。
田巻さんが緩和ケアの世界に入ったきっかけとして、ホスピス医として有名な山崎章郎氏や柏木哲夫氏の著作の影響があったそうです。消化器内科医になって10年くらいした頃、「自分にとって本当にやりたいことは何だろうか」とだんだん考えるようになった時に、これらの本に出会ったとのこと。それまでに接した患者さん自身からも大きな影響を受けたとおっしゃっていました。
11 月
17
蔵田伸雄さん 「がん医療の現場に倫理学を」
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蔵田さんがとても良くなったと絶賛されている北大大学院文学研究科のホームページ。思想文化学→倫理学講座とたどって入るとLab.Lettersのところに研究室からのメッセージがあります。「21世紀を貫く賢人たちの問いかけ 社会でも使える思考力を養う学問」との言葉が倫理学への思いを語っています。
インタビューに先立って教えていただいた旬の記事がありました。さすがに「蔵田はいつもつい働く」(回文になっている)と言われているように多方面に活躍されています。
『季刊 読書のいずみ izumi』119夏号(2009年6月)には「わが大学の先生と語る」という記事で、大学生とのインタビューを通して、いっそう身近な身近な蔵田さんの姿を知ることができます。
『サステナ』第11号(2009年4月)に2008年12月に東洋大学で「サステイナビリティ学における哲学の役割」として行われたセミナーの基調講演と討論の内容が掲載されています。ここでは「哲学・倫理学は価値を分析し、サスティナビリティ学は価値に関わる科学です。哲学・倫理学はサスティナビリティ学に対して、さまざまな価値の対立構造を分析するという形で貢献できます」と述べられています。
がん医療に関わる推薦書として、熊沢健一さんの『告知』を挙げていました。外科医自ら実践した妻へのがん告知と末期医療の記録として、読み出すと涙がでるとおっしゃっていました。
11 月
17
白土博樹さん 「がんを精確に狙い撃つ放射線治療」
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白土さんは日本の最先端研究開発支援プログラム「中心研究者及び研究課題」の30人の研究者に名前を連ね、現在も大変精力的に活動されていますが、インタビューの時には真剣に、しかしあたたかな対応をしてくださいました。その人間性こそが、大きなプロジェクトを成功させる秘訣でしょう。
そんな白土さんは、実は大学時代は医学部ボート部で部活に打ち込み、医師の国家試験直前まではどの分野に進もうか迷っていたとのこと。そこで放射線科に決めたきっかけは、部の先輩の「放射線科は将来性がある」という何気ない一言でした。その放射線治療との偶然の出会いから、今日の技術に至るまで積み上げた努力と信頼は計り知れないものだと感じました。
また白土さんはインタビュー中、「±1mmの精度」という言葉を何度も使われていたのも印象的でした。実はインタビュアーも放射線について学んだ経験があるので、ここまで高精度にできることに大変驚きました。この"精度"に対する飽くなき挑戦が現在の動体追跡技術の完成につながっていったのでしょう。
今後、四次元放射線治療をはじめ、患者さんに優しい医療が広まっていってほしいと思います。
11 月
17
秋田弘俊さん 「一人ひとりに合ったがん治療の時代へ」
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秋田さんは、取材の質問に対して非常に穏やかに、そして、ものすごく丁寧にお話しをしてくださいました。「患者から喜ばれるのが何よりの喜び」という言葉の通り、その親しみ深い人柄が、スタッフはもちろん、患者からの絶大な信頼を引き寄せるのでしょう。
生涯をがん研究に注いでいる秋田さんの意気込みは、穏やかな雰囲気とは対照的に並々ならぬものがあります。取材時に秋田さんが紹介してくれたがんに関する教科書("CANCER")は、びっしりと細かい英語で書かれており、百科事典のように分厚い本です。また、秋田さんは編集副委員長として『新臨床腫瘍学』(南江堂)の編纂にも携わっています。
がんの性質が一人ひとり異なるというのは、実はわりと最近になって判明した事実です。現代は、個別化されたがん治療がよりいっそう求められる時代と言えます。
そんな時代の先端に位置する秋田さんの展望は、バイオマーカー(事前にどんながん治療薬が最も効果が高いかを知る手がかり)の研究をさらに発展させ、少しでも多くの個別化治療のプロセスを確立させることです。どんながんに対しても、副作用の少ないぴったりの治療法があり、医療費も安く抑えることが可能ながん治療。そんな夢のような医療が実現し、一人でも多くのがん患者が救われることを心から期待しています。
11 月
17
松田彰さん 「新しい治療薬をデザインする」
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松田さん(所属研究室のウェブページ)は、「開発した抗がん剤CNDACがなぜDNAの複製を阻害するか?」について、ホワイトボードに化学式を書きながら説明してくれました。「CNDACは、塩基の部分がCと同じなので、Gの対となり、DNAの鎖を作ろうとする。しかし、他の部分がCと異なるので、次のヌクレオチドとは結びつかず、そこでDNA鎖が切れてしまう」と熱弁する姿に、科学者と同時に教育者としての魅力を感じました。
松田さんは「一九七八年、カルフォルニア大学サンフランシスコ校に留学していたとき、のちにノーベル生理学・医学賞を受賞したガートルード・エリオンによる三日間の連続講演がありました。そのとき、薬の作用を考えてデザインした治療薬開発という世界で初めての試みを知り、私も創薬をしたいと思いました」と語ってくれました。また、「薬学は実験科学であり、三度の飯よりも実験好きでないと務まらない」、「よく『好きこそものの上手なれ』と言われるが、上手になるための努力がないとダメ」、「知識を詰め込むより、むしろ、実験を通じて、なぜ?どうして? という問題意識を大事にしてほしい」といったメッセージも印象的でした。
記事中の図の説明:
DNAは二本の鎖がらせん状に結びついた物質で、ヌクレオチドと呼ばれる基本単位に分けられます。それぞれのヌクレオチドは、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)という四種類の塩基のどれか一つを含みます。二本の鎖が結びつくとき、CとGあるいはTとAが対になります(相補的関係)。細胞が分裂するとき、もとと同じDNAがつくられます。きちんと複製できるのは、この相補的関係があるためです。
CNDACは、塩基の部分がCと同じですが、他の部分がCと異なる分子構造をもっています。そのため、CNDACがGの対となり、次のヌクレオチドが取り込まれるとDNA鎖が切れて、がん細胞のDNA複製を妨げるのです。
11 月
17
加藤元嗣さん 「ピロリ菌除菌による胃がんの抑制」
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治験症例数を集めるための工夫
加藤さんは、胃内部のピロリ菌を除菌することが胃がんの発生を抑制することを証明するための臨床試験で,十分な症例数を集めることに大変苦労したとのことです。この臨床試験を行うためには,薬を服用するグループと偽薬を服用するグループへ無作為により分ける必要があります*。
ピロリ菌の影響によって胃がんが発生することが浅香正博さん(現北海道大学病院長)などの研究によって明らかにされ,ピロリ菌除菌が胃がん発生を抑制することを証明できていない段階にも関わらず,除菌を求める人が増えました。そうなると,事前説明を行っても大多数の人が除菌を求め,無作為により分けることができない状況となってしまいました。
しかし,あるとき,加藤さんらはすでに胃がんになったことがある人たちに参加を呼びかけたところ,了承してくれる人が多いことに気づき,この人たちに被験者となってもらうようにお願いすることにして,臨床試験を行いました。その結果,十分な症例数を集めることができて,ピロリ菌除菌が胃がんの発生率を抑えることを証明することができたとのことです。
私たちが薬の効果を知るためには臨床試験によってそれを証明する必要があります。しかし,臨床試験には被験者の存在が欠かせません。被験者もまた人間なので,もしその行為を享受することで,自らの命を長らえることができるなら,そちらを積極的に受け入れたいと思うのが人間の心理というものです。加藤さんたちの事例は,臨床試験を行う上での難しさに立ち向かい,それを乗り越えたよい例だと思います(北海道大学病院ピロリ菌専門外来のウェブページ)。
* 人には,偽薬を処方しても薬だと信じ込むことによって何らかの体調の変化がみられることがある(プラシーボ効果)。そのため,効果や副作用が心理的効果によらず薬によるものであることを証明するために,臨床試験を行うときには,被験者及びそれを仲介する医師には,それが薬なのか偽薬なのかを分からないようにしている。
11 月
17
石川正純さん 「放射線治療のプロフェッショナルを育てる」
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「医学物理士」という、聞きなれない職種に戸惑いながら、読者に上手く伝える記事が書けるかどうか不安に駆られながら取材を始めました。対応して頂いた石川さんは物静かな、しかし研究に傾ける情熱がひしひしと伝わる方でした。
現在、がん治療における放射線治療は、従来にも増して重要なポジションを占めるとともに、高度な設備とそれを運営する技術スタッフが必要となってきており、そこに医学物理士が登場します。
実際に診療に活用されているいろいろな放射線療法について説明を受け、放射線治療の有用性について話していただきました。医学物理士の養成の過程で学ぶ科目の詳細や、医学物理士が不足している現状についてもお話しいただきました。また、医療機関で医学物理士として働きながら、最先端の知識の習得や、新しい治療法の開発のために大学で学ぶ受講生に対しては、放射線療法に携わる専門家としての大きな期待を込めておられました。
石川さんの説明は、そんな医学物理士が真剣に治療に取り組んでいる姿が目に浮かぶようなものでした。また一緒に取材に応じて頂いた「がんプロフェッショナル養成プラン」の受講生のお二人も石川先生と同様、医学物理士としての決意を語ってくださいました。
取材を通して、がん治療の最前線の一面を垣間見ることができ、北海道大学のがん治療研究は、非常にレベルの高いものであり、日本いや世界に誇れるものだと実感しました。
11 月
17
髙田賢藏さん 「ウイルスを創薬に利用する」
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髙田さんは、「大学での基礎研究」と「ベンチャー企業の経営」と、幅広く活躍されている研究者です。インタビュー時に、大学用と会社用の2枚の名刺を渡してくださいました。「大学では名刺を使うことはあまりないので、普段は会社用しか持ち歩いていないですね」と笑っていらっしゃったのが印象に残っています。ふたつの活動のバランスをどのようにとっているのかと尋ねると、「研究室の運営も会社の運営も、求められる手腕は同じ。だからバランスは特に意識しませんし、違和感もないです」とのこと。
直接的な社会貢献が求められるようになってきた時代の要請に応え、株式会社イーベックを設立。生き残りの厳しいベンチャーの世界で、ドイツ企業とライセンス契約を締結するという成功を収めました。その功績により、今年6月には科学技術政策担当大臣賞を受賞されています。
産学連携の研究をされている一方で、基礎研究の重要性も強調しておられました。「さまざまな応用研究のベースには必ず基礎研究があります。基礎研究も大事な社会貢献の形」と語る口調には、穏やかながらも研究への情熱が感じられました。

髙田さん(右)と、ドイツのウイルス学者ツア・ハウゼン氏(左)。ハウゼン氏は2008年のノーベル生理学・医学賞受賞者です。髙田さんは1983年から2年間、ハウゼン氏のもとに留学していらっしゃいました。
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