岐阜生まれで長良川にちなんだお名前の玉木長良さんは「北大出身ではないのですが、北大が大好きです」と笑いながら、「北大は新しい事をどんどんやっていこうと云う雰囲気が感じられる」とがん診断・治療のイノベーションについて語ってくださいました。学会や講演で全国を飛び回り、学生への指導にも忙しい中、とても通る声でわかりやすく話していただきました。

「卒業したての頃、PETのことを知り、魅力に取り付かれた」という玉木さんにそのきっかけを作ったのは、「人との出会い」。大学を卒業後、心臓の血流による心臓病の診断についての講演を聴き、そのハーバード大学の先生に感銘を受け、すぐに核医学(放射線を使って診断・治療を行う医学分野)の道に進む事を決意され、留学先もその先生のいるハーバード大学に決めたそうです。
玉木さんは情報発信にも力を注がれており、ホームページで核医学の内容をわかりやすく解説したり、教室の活動を広く伝えることも積極的に行っています。



小野塚さんが勤務する「がん相談支援室」のメンバーは5名で、うち4名が経験10年以上のベテラン看護師、1名がソーシャルワーカー。担当する患者さんは、月に60名ほどで、約6割がかん患者。「がん相談支援室」は、退院した後に通院する病院の紹介や、ケアマネージャーとの介護メニューについての相談、また高額医療費の助成制度の説明など、患者さんの退院後の生活をサポートしています。

確かに、患者自身の状況を理解している看護師がサポートしてくれるのは、とても安心です。「でも、白衣を着た方がそのような事をすると、患者さんが戸惑いませんか」と聞いてみたところ、「私たちは注射を打つ、体を拭くなどの治療行為はしないので、怪訝な顔をされることがあります。でもだんだん慣れてくるようです。『この人は注射をしない看護師なんだ』って」と、笑顔で答えていただきました。

また腫瘍センターには、外来治療センターがあります。ここでは退院後、治療のために通院する患者さんが安心して治療を受けられるように、腫瘍内科医が中心となり、専任の薬剤師が調剤し、経験豊富な専門(認定)看護師がケアにあたっています。副作用への対処もその場で適切に実施されます。この外来治療センターのナースステーションと、がん支援相談室のナースステーションは同じ部屋で、患者さんを細かくサポートするために、毎朝のミーティングなどでこまめに情報交換しています。ナースステーションを同じにしているのは、北大病院以外には少なく、その効果は大きいといいます。



近藤さんの所属する医学研究科医学専攻外科学講座腫瘍外科学分野のホームページには次のように書かれています。

“私たちの診療の特色は2つあります。ひとつめは『癌をしっかり取りきること』であり、もうひとつは『体にやさしい手術をおこなうこと』です”

これは、がんの外科治療における根治性と保全性のことを示し、近藤さんは両者のバランスが大切だと指摘しています。治癒と同時に、患者の生活の質(QOL:クオリティオブライフ)を重視した「やさしい手術」という発想。専門スタッフが一丸となって、患者の命と生活を支えてくれる頼もしさを感じた取材体験でした。

穏やかな物腰と優しい笑顔、そしてときには熱っぽくがんの外科治療にかける思いをお話してくださった近藤さん。自分や大切な家族がもしもがんになったなら、ぜひ近藤さんに診療していただきたい、と思いました。



小松さんは、当初は血液の研究に関心があったそうです。その理由は「血液には白血球など、美しいものが多かったから」とのこと。ロマンチストの一面が顔を覗かせます。当時、血液と消化器の診療を担当していた第三内科に入局し、白血病の研究を始めました。その後研修医として、道北の病院に派遣されます。
しかし、その病院で白血病の患者さんを診ることはなかったそうです。なぜなら、白血病は10万人に1人の病気。その代わり、がんの患者さんはたくさん来院されていました。それが、がん治療を意識し始めたきっかけだと話してくださいました。

小松さんがその研修中、知り合いの人が、がん患者として通院していました。その時は、すでに胃がんが肝臓に転移している病状。当時、胃がんが肝臓に移転していたら、余命3ヶ月と言われていました。ところが、抗がん剤の血管注射と、肝臓(病変部)への直接注入でがんが消えたのです。この体験がきっかけとなり、腫瘍内科医に。その後、国立がんセンターでさらに化学療法の研鑽を積み、北大に戻り、現在、腫瘍センターの副センター長。

小松さんが、美しいものを愛する心を持ち、自分でやろうと思うことに向かってどんどん進む行動力を併せ持つドクターだと感じました。

『リテラポプリ』37号の特集は、「北大は言語で世界と向き合う」です。
言語にまつわる研究や教育の最前線をCoSTEPの受講生・修了生・スタッフが取材し、特集記事に構成しています。

特集記事は以下の通りです。
それぞれの記事のPDFファイルと、関連するブログ記事へのリンクがありますので、ぜひご覧下さい。

また、リテラポプリ37号全文のPDFファイルは、以下のリンクからご覧下さい。
http://www.hokudai.ac.jp/bureau/populi/edition37/index.html

全国の大学を見渡してもまれな関西「語」講座を手がける山下さん。まずは、自身の著書『関西弁講義』(講談社選書メチエ)をご紹介いただきました。


本の紹介文には、「中国語のように音調を有し、スペイン語のように母音が優勢な言語=関西弁。独自の体系を持つ関西弁の音韻、文法、語彙を名物教師が本格的かつ面白く教えまっせ! 」とあります。言うまでもなく、講座ではこの本に書かれているような内容を実際に学ぶことができるわけです。


記事本文でも紹介されている、マサチューセッツ工科大学(MIT)の関西弁サイトは、「京都大学など関西圏の大学や研究所などに入ったMITからの留学生が、習った標準語とあまりにも異なる関西弁に戸惑うことが多かったことから開設された」(山下さん)ものだそうです。


授業を取材した時に、何人かの受講生から感想をいただきました。記事本文に取り上げられなかった声をいくつか。


札幌出身の高嶋恭平さんは「趣味で小説を書いている。登場人物の関西語の台詞に不安があったので受講した」。神戸出身ということから授業のTA(ティーチング・アシスタント)を務める木村友樹さん(医学部保健学科)は「どうやって関西語を教えるかに興味がある。理論なんて考えたことなかったから」。香港から来た孫家俊(ソン・カシュン)さんは、「広東語には複雑な声調がある。日本語の標準語より関西語に近いかも」とお国の言語を分析してくれました。

文学研究科長の望月さんが紹介してくれたロシアの絵本に出てくるキャラクター「チェブラーシカ」(日本語の公式サイトはこちら)について、少し補足しておきましょう。


チェブラーシカは、ロシアの児童文学作家エドゥアルド・ウペンスキーが1967年に発表した絵本に初めて登場。もともとは、同じ絵本に出てくる「ワニのゲーナ」が主人公だったようですが、いつの間にかチェブラーシカのほうに人気が集まり、ロシアでは知らない人はいない程の人気者となりました。


絵本がシリーズ化されるとともに、短編の人形アニメーション映画としても制作され、2001年にこれが日本国内でも公開されると若い女性などに高い支持を得ました。望月さんが言う通り、原語でチェブラーシカを読む授業に多数の受講者が集まったのもうなずけます。記事本文でも望月さんが「商業主義に毒されていない独特の魅力がある」と語る、ロシアの絵本。ネット上でも、その魅力を伝えるサイトがいくつか(たとえば、こちら)あります。外国語にふれる入り口として、絵本を手にとってみてはいかがでしょう。

手前は、アイヌ語の録音媒体のコレクション

手前は、佐藤さんが長年にわたって収録してきたアイヌ語話者の語りを録音した媒体のコレクション



佐藤さんの履歴と業績などが載っているサイト。また、文学研究科のウェブサイトにも佐藤さんの紹介があります。


佐藤さんが昨年出版された本について、インタビューのときに以下のように話してくださいました。


「アイヌ語には標準語がなく、文法書を作りにくく、教育が難しいのですが、昨年『アイヌ語文法の基礎』(大学書林)を出版しました。それは千歳方言の話者の白沢ナベさんからの聞き取り調査に基づいています。1989年から1993年まで足掛け5年間聞きとり調査し、それをずっと研究していました。白沢さん自身、なんとか後世に残していきたいという意識の強い人で、協力してくれたのです。」


佐藤さんが挙げてくださったおすすめの本を紹介します。まず、知里幸恵『アイヌ神謡集』(岩波文庫)。佐藤さんが高校生時代にとても感銘を受けたそうです。それから、幸恵の弟、真志保が書いた『アイヌ語入門』。アイヌ語の古典的教科書です。佐藤さんはやはり高校時代、図書室でこの本を見つけたそうですが、当時はパラパラめくっただけで、通り過ぎてしまったそうです。でも佐藤さんがアイヌ語研究者となってからは、折に触れて参照し、研究への刺激を受けているのだそうです。ちなみに、知里真志保は生前、北大文学部で教壇に立っていました。



右上はセルビア語の統語論の本、開いているのはカッシューブ語の文法書。

右上はセルビア語の統語論の本。開いているのはカッシューブ語の文法書。



スラブ研究センターの野町さんが北大に着任したときの紹介記事(「スラブ研究センターニュース」2008年春号No.113より)。野町さんは、「スラブ研究センターニュース」2008年夏号No.114の「エッセイ」に、「スラブと私を結ぶ運命の1 冊」という題で、ミルカ・イビッチの本との出会いと不思議な縁について話しています。同じく「スラブ研究センターニュース」2009年春号No.117の「エッセイ」には、「ロムアルド・フシチャ教授をお迎えして」という記事も書いています。また、文学研究科歴史地域文化学専攻スラブ社会文化論講座の協力教員としての紹介もあります。


野町さんから、おすすめの本に関して以下のメッセージをいただきました。


「最新の研究だけではなく、古典と呼ばれる名著にも多く触れることが大事です。スラブ語学を研究する場合でも、スラブ語だけではなく、言語のことを一般的に学ぶ方がいいでしょう。例えば、ソシュールの『一般言語学講義』(東大出版会)、ブルームフィールドの『言語』(大修館書店)、サピア『言語―ことばの研究序説』(岩波文庫)がおすすめ。また、言語の研究史を知ることも重要です。イビッチ『言語学の流れ』(みすず書房)は東欧・ロシアも含めた言語学史について幅広く学べます。スラブ語学研究で影響を受けたのは、『ロマーン・ヤーコブソン選集』。ロシア語やその他のスラブ語を題材とすることが多く、その緻密な分析、説得力のある議論、そして何よりも時に学問分野を超える視野の広さは、誰もが実践できるわけではありませんが、一つの理想です。スラブ諸語の比較研究では、イサチェンコ『スロバキア語と比較したロシア語の文法構造』(邦訳なし)。これも古典ですが、スラブ語の比較の意味と手法を明快に示した名著です。また、イビッチ『セルビア・クロアチア語の具格の意味とその発達』(邦訳なし)にも大きな影響を受けました。」

津曲さんが編著者の『北のことばフィールドノート』

津曲さんが編著した『北のことばフィールド・ノート』



津曲さんの文学研究科ウェブページにおける紹介。また、所属の北方文化論講座民族言語学研究室のホームページでも紹介されています。こちらから津曲さんの研究室の様子がわかります。そのページには、「主要編著書」「履歴と研究活動」へのリンクもあります。ツングース諸語についてですが、"at home"社の教授対談シリーズ「こだわりアカデミー」に津曲さんの研究活動が紹介されています。


津曲さんおすすめの本を紹介します。まず、『日本語の起源』(大野晋、岩波新書)。津曲さんは、北大1年生のときにこの本の旧版を読んで、影響を受けたそうです。それから、『北のことばフィールド・ノート』(津曲敏郎編、北大出版会)。これは、北方少数民族の言語のフィールドワーク調査に基づくエッセー集。言語と民族への視野を広げてほしいとのことです。


現在の研究に関連して影響を受けた本としては、『デルスウ・ウザーラ:沿海州探検行』(アルセーニエフ著/長谷川四郎訳、平凡社東洋文庫)。この本について、津曲さんから以下のメッセージをいただきました。


「極東の探検家であった著者の実体験に基づく、ツングースの猟師が主役の作品。黒澤映画でも有名です。先住民の知恵と文明の愚かさ、豊かな自然を蝕む開発といった今日的な問題を静かに問いかけています。先住民の言語と文化が失われつつある今、改めてじっくり読み、観たい作品ですね。」


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