【話題】 出世を望まない若者が増えている

昨年、リクルートが高校生を対象に行った調査で、「将来、会社の中で偉くなりたい」 という高校生は29.6%しかいないのに対し、「自分の趣味や好きなことができる仕事をしたい」は79.9%にのぼった。 大手広告代理店に入社して8年目になる男性(31)は、主任として部下をまとめる立場だ。 しかし、「これ以上の昇進は望まない」という。「責任だけが増え、自分のやりたいことができなくなる。 出世しても何もいいことはない」 リクルートの調査部門「ワークス研究所」の主任研究員、白石久喜(44)は若い世代が 「夢を見なくなった」と指摘する。 年功序列で給与が上がる終身雇用体制は過去の話。年金の負担が増える一方で、 自分が年を取ってももらえるのか分からない。白石は「仕事以外で喜びを見いだすしかないのか」とため息をつく。 電車内で大勢の人が携帯電話をいじる風景はおなじみだが、その日、東京経済大コミュニケーション学部教授の 関沢英彦(64)は「ここまできたか」と感じた。座っている人全員が携帯を操作していた。 「電車に乗る時間さえもバーチャル(仮想的)なデータにさらされ続けている。これでは、五感が鈍っていくばかりだ」 関沢によると、現代人は五感による判断能力が低下している。「路上で人をよけるタイミングを計るのが下手になり、 ぶつかってしまうケースが増えている」と話す。 恋愛でも、理解しがたい考え方の学生を目の当たりにする。 自分の好みのタイプを決めてしまうと、現実の世界で、タイプとは違うが多少気が合う異性がいても付き合おうとしない。 「自分の立ち位置やタイプを決めると離れようとしない。現実での接し方が分からないのか」と 関沢は不思議がる。そんな学生は着実に増えているという。 関沢は「知らない世界には立ち入らず、リスクを避ける。何でもネットで体験し、現実と触れ合わない風潮がある」と話す。 リアルを避け、快適な空間に安住する若者はどこに向かうのか。関沢にも分からない。

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