Archive for 2 月, 2010

22nd 2 月 2010

I WAS THERE #4 MARTINA BACIGALUPO


photo+text ©Martina Bacigalupo(イタリア、ジェノバ)

この写真はイタリアのジェノバにある視覚障害者協会(Institute for blind people)で撮ったうちの1枚だ。

この少女が部屋に入ってきた時、私はせわしなく三脚を固定したりカメラにフィルムを入れたりしていた。彼女は私に、どこに行けばいいかとたずねた。私はとっさに答えた。「そこの壁の前に行ってください」。すると彼女は言った。「壁はどこ?」

私は動かしていた手を止めた。時間がなくなることを心配して準備を急ぐあまり、うっかりしてしまった。私が優しくきちんと彼女を壁際まで連れていくと、彼女は何も言わずにその場に座った。私は写真を撮らずに、彼女に学校や友達、日々の生活のことをたずねた。私たちはしばらくこんなふうに静かに時を過ごしていた。すると突然、彼女が窓のほうに顔を向け、「見て!」と叫んだ。私は窓の外を見たが何も見えなかった。それが何だったのか、彼女はどうして窓のある場所がわかったのか、何を"見た"のか、私にはどうしてもわからなかった。

この写真で私が気に入っているのは、そこに流れる時間とささやかなものだ。焦りや無理強いは禁物である。何かが起こり私たちがその出来事を目にするには時間が必要なのだ。そうすれば、日々の生活のほんの一瞬に存在する生活の真実や魔法が見える。

目の不自由な少女がフレームの外を指差し、「向こうに何かあるよ」と教えてくれている。その「向こう」がどこであれ、大切なものはいつも目に見える世界を超えた向こう側にある。私たちはみな、その場所を探しに行かなければならない。

English original text:

This picture is part of a sequence taken at the institute for blind people in Genoa, Italy.

I was busy fixing the tripod and loading film when this child came in the room. She asked me where she was supposed to go, and I quickly answered "There against the wall, please" She said: "Where is the wall?"

I stopped doing whatever I was doing. I was so concerned of running out of time and therefore trying to have everything ready that I was missing the point. I walked with her to the wall, and she sat there without talking, in a contented way. I asked her about her school, her friends, her days, without taking pictures. We spent some time like that, quietly. Then she suddenly turned her face toward the window and cried "Look!" I looked out of the window but couldn't see anything. I never knew what it was she had seen, how did she even know where the window was.

What I like about this picture is that it is about time and little things. The time needed for things to happen and for us to see them, with no rush, no imposition. The little moments of daily life which are its truths, and life’s magic.

A blind child points out of the frame, saying "It’s beyond. Wherever it is, the important thing is beyond what you see, it’s elsewhere. For each of us to go and see where that is."

MB, January 2010

*参照リンク
ジョルジア・フィオリオのリフレクションズ・マスタークラス
http://www.giorgiafiorio.org/eng/galleries/rm/re_testi.html

世界報道写真財団、第15回マスタークラス参加後のインタビュー動画
http://www.worldpressphoto.org/index.php?option=com_media_gallery&area=showGallery&task=view&id=14&Itemid=72&bandwidth=high

これまでの仕事が紹介されているサイト、英語、イタリア語
http://www.hrw.org/en/news/2009/07/29/burundi-gays-and-lesbians-face-increasing-persecution
http://www.photoeditors.it/premio-ponchielli/edizioni-precedenti/premio-ponchielli-2009/martina-bacigalupo
http://mattiolidaniele.blogspot.com/2009/02/profile-martina-bacigalupo.html
http://vimeo.com/7729561

写真家プロフィール:
イタリアで文学と哲学を専攻した後、ロンドン・カレッジ・オブ・コミュニケーション(London College of Communication)で写真を学んだ。2005年、その年の Black & White Photographer of the Year Awardを受賞。パリ在住の写真家、ジョルジア・フィオリオの元で働くようになり、リフレクションズ・マスタークラス(Reflexions Masterclass) に参加。
この数年来、国連や、ヒューマンライツ・ウォッチ(HUMAN RIGHTS WATCH)、ケア(CARE)、ハンディキャップ・インターナショナル(HANDICAP INTERNATIONAL)などの国際的NGOに賛同し、人権問題に焦点を当てながらブルンジでフリーの写真家として活動している。また2009年にはイタリアとフランスで振付師のヴィルジリオ・シエニ(Virgilio Sieni)とコラボレーション。
2008年、世界報道写真財団のマスタークラス(World Press Photo Masterclass)に選ばれ、2009年のポンキエッリ賞(Ponchielli Award)を受賞している。
http://www.martinabacigalupo.com

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15th 2 月 2010

I WAS THERE #3 RONY ZAKARIA


photo+text ©Rony Zakaria (ジャカルタ 2009年12月)

人の尊さが伝わらない写真を撮るくらいなら、人の写真を撮る意味などない」

初めてメンタルヘルスセンターに足を踏み入れたときから、このシンプルなサルガド セバスチャン・サルガドの言葉が頭から離れなかった。ここにいる患者達が写真に写ることを拒否することも承諾することもできないのは明らかだった。

私は、2008年から2009年にかけての半年間で238人もの患者、つまり毎日1人以上の患者が亡くなっている理由を知りたくてインドネシアのジャカルタにあるメンタルヘルスセンターを訪れた。訪問中、使用期限切れの薬の投与、スタッフの精神病患者に対する知識不足、患者によるか弱い患者への暴力など多くのことが見過ごされがちだと気づいた。

一度スタッフが食べ物を配っている場所へ行った。患者達はとても混みあった部屋の中で、自分達の元に食べ物が来ないのではないかと必死になって食べ物を取ろうと手を伸ばしていた。それは人が生き残る上での基本的な行為だった。本来なら回復することに専念すべきなのだが、そこにいる患者達は生きることを最優先に考えていた。

患者達は会うたびに違う名前を口にした。死後、彼らの墓石には単にXと刻まれる。中にはそれすらないものもある。アイデンティティーは失ってしまったかもしれない。しかし我々は彼らの尊厳を踏みにじったり、彼らを軽視したりするべきではない。たとえどんな名前を名乗ったとしても、これは人間としての他者に対する義務である。

(2009年12月 ジャカルタ)

English original text:

“If you take a picture of a person that does not make him noble, there is no reason to take his picture.”

Those simple words by Salgado kept lingering in my head when I walked myself into a mental health center for the first time. I realized these patients do not have the ability to refuse or accept being photographed.

I visited these mental health centers in Jakarta, Indonesia in my curiosity on why, in the last six months in 2008-2009, as many as 238 patients died. More than one patient everyday. During my visits, I discovered many things : the distribution of expired drugs to patients, the staff’s lack of knowledge in handling psychiatric patients and attacks by patients on other weaker patients which are often ignored.

Once I went into a section where the staff were handing out food. The patients were standing inside their overly crowded rooms stretching out their hands for food, struggling to get it, knowing that food wouldn’t come to them. It was a basic act of survival. These patients were supposed to struggle only for their recovery but instead, that became secondary after their lives.

Some patients are given different names everytime I meet them. After death, their tombstone are marked with a simple ‘X’ symbol, some have nothing. Identity may have been lost, but we should not force them to lose their dignity and neglect them. It is an obligation as fellow human beings towards another one, no matter what their names are.

(Jakarta, December 2009)

*参照リンク
Living in X
http://www.ronyzakaria.com/photos/features/living_in_x_2010/index.html

*関連リンク
モフタル・ルビス賞|Mochtar Lubis Award
http://www.lspp.org/mochtarlubisaward/

写真家プロフィール:
インドネシア、ジャカルタを拠点に活動する写真家。2006年、アンタラ・フォトジャーナリズム・ギャラリー(Antara Gallery of Photojournalism)で写真を学んだ後、写真家としての活動を始める。

2008年と2009年にはFAOとモフタル・ルビス賞から写真の助成金を受け取り、インドネシアの健康問題に関する彼個人のプロジェクトを成し遂げた。彼の作品はTime Asia、Monocle magazine、BBC、Asian Geographicといった多くの一流誌に掲載されている。また、ジャカルタやマルセイユ、パタヤ、台北、バングラデッシュでは展示会も開かれている。

現在、フィリピンのマニラにあるアジア・ジャーナリズム・センター(Asian Center of Journalism)の特別奨学金給費生になっており、活動および生活拠点はジャカルタである。
http://www.ronyzakaria.com/

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08th 2 月 2010

I WAS THERE #2 MASARU GOTO


photo+text ©Masaru Goto

銃声を聞きその場で立ちすくんだ。その乾いた音はあまりにも近くで響き、まさかと思って人権擁護団体のオフィスから飛び出すと、毎朝行くカフェテラスに、三人が血まみれになっているのが見えた。二人は友人の労働組合職員、そしてもう一人は共に働いていたフリオ・セサー・バリオだった。三人とも即死だった。

1992年、南米コロンビアに来て一年が過ぎていた。その北部に位置するバランカベルメッハ市。国内最大の油田基地があり、密林の奥にそびえる山脈はコカインの栽培に適している。軍事的にも重要な都市であり、そのため1980年代以降、左翼ゲリラと右派民兵、そして政府軍による三つどもえの争いが続き、ジャーナリストや人権活動家も抹殺されていた。

民兵による大規模な進攻作戦が行われ、人権擁護団体の仲間も次々と殺されたが、フリオと僕はチームを組み、時にはゲリラの解放区まで調査に行った。「危険なのは分かっている。でも誰かがやらなければいけない。」彼の口癖だった。虐殺の痕や泣き叫ぶ犠牲者家族の撮影が続く日々のなかで、僕は写真家としてどうあるべきか、そして写真を写す意味を学んだ。

つい先日、Human Right Watchのサイトでディロ・ゴンザレス(Diro Gonzales)のインタビューを見た。彼はバランカベルメッハで「ラ・タルデ(La Tarde)」という新聞を発行している。取材当時、時間を見つけては彼のオフィスに入り浸っていた。
懐かしい思いで彼がインタビューを受ける姿を見ていた。
いまだに戦っている彼に深い尊敬の念を抱を抱く。

*参照リンク
Masaru Goto | 2002 | FiftyCrows - Social Change Photography
http://www.fiftycrows.org/2002/masaru-goto/portfolios-ai_18.html

*関連リンク
コロンビア:民兵組織の後継グループが人権蹂躙|HUMAN RIGHTS WATCH
http://www.hrw.org/ja/news/2010/02/03
Colombia: Deadly Threats|HUMAN RIGHTS WATCH
(英語、ゴンザレス氏のインタビュービデオあり)
http://www.hrw.org/en/feature/colombia-deadly_threat

写真家プロフィール:
写真家、Guevara New York/Creative Media Agency代表。89年に渡米後、南米の人権団体と活動。97年からカンボジアに移り、以後エイズや児童売買などの社会問題を追う。現在は日本とバンコク拠点。
http://www.masarugoto.com

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01st 2 月 2010

I WAS THERE #1 KOSUKE OKAHARA


photo+text ©Kosuke Okahara

3日ほど連絡を取らない日が続いた。なんとなく気になって電話をかけると、電話口に出た凪(なぎ)ちゃんの声がおかしい。
「OD(オーバードーズ)しちゃって…」
「何錠飲んだの?」
「270錠くらいかなぁ…」
急いで彼女のアパートに駆けつけてドアを開けると、一人うずくまっている姿がそこにあった。
救急車を呼ぼうとすると、
「でも…病院に運ばれたら…お金…ないから…」
金とかそんな議論をしている場合ではないが、医療費の負担はお金の無い人にとっては恐怖だとも思う。
金なら心配しなくていいと彼女を諭して、救急車を呼んだ。

「ジャーナリストはその場に介入すべきではない」

誰かが言っていた言葉が頭の中をよぎった。本当にそうなら、僕はジャーナリストなんて言葉に未練はない。

5分ほどすると救急車のサイレンが聞こえてきたので、アパートの外に出て救急隊員を部屋に案内する。彼らが凪ちゃんの手当てを始め、僕は写真を一枚撮った。
幸い、凪ちゃんは大事に至らず3日ほどで退院して元の生活に戻った。結局、彼女が心配していた治療代も、家族がかけつけて何とかなった。

僕はこの自傷の取材について、ずいぶん批判を浴びた。この写真の話をしたらこう言われるかもしれない。
「救急車のシーンを撮りたいから、金の心配をするなと言ったんだろう」
実際にそう思われても仕方ない。ただ、この自傷のシリーズを見てもらえれば、そんな誤解よりも、彼女たちのストーリーを感じてもらえると信じたい。

*参照リンク
「居場所」 PDFX12|photo documentary folioX12 vol.22
http://bit.ly/pdfX12_ibasyo
Self-Injury in Japan(TIMEオンライン版)
http://www.time.com/time/photogallery/0,29307,1809157,00.html

写真家プロフィール:
コソボ(旧ユーゴ)を訪れたことがきっかけで写真を撮り始める。人の居場所を主なテーマに、中南米、アフリカ、日本などで取材を続けている。
http://www.kosukeokahara.com

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